Goettfert社よりキャピラリーレオメータの新しい追加オプションとして、第一法線応力差を評価する『法線応力ダイ』が開発されました。本開発は、カールスルーエ工科大Wilhelm教授のワーキンググループと協力して行われました。

法線応力ダイはポリマー特性を区別するためのキャピラリーレオメータ用追加オプションです。
オプション追加可能な機種はRG20~RG120が対象です。(装置の製造時期により対応できない場合がございます)

第一法線応力差はダイスウェルや不安定流動など材料特性と関係性があると考えられています。第一法線応力差の評価は通常コーンプレートを用いた回転レオメータで行われています。しかし、最大10s-1のずり速度までが測定限界となり、それ以上の領域はエッジ部分の破壊など材料起因の制限により測定を行うことが出来ません。

新たに開発された法線応力ダイでは、高いずり速度領域の第一法線応力差の他にもずり粘度、伸長粘度を同時測定が可能です。

法線応力ダイの構造

法線応力ダイは2つのパーツで構成されています。スリット部には圧力センサ2本(P2とP3)、ラジアル部に1本(P4)を取り付けます。ずり粘度はスリット部分で第一法線応力差はラジアル部、伸長粘度はダイ入口の圧力損失からもとめることが出来ます。

ずり粘度はP2とP3の圧力損失から計算します。スリット部のP3-P2の圧力センサから圧力差を測定出来るため、Baglay補正は必要ありません。伸長粘度は本体バレル側の圧力センサP1とP2、P3の圧力から外挿されたダイ入口の圧力損失によりコグスウェル法を用いてもとめることが可能です。第一法線応力差はラジアル部の半径方向部で計算されます。

図2は法線応力ダイとコーンプレートで測定した第一法線応力差の値がきれいに一致していることを示しています。

不安定流動と第一法線応力差

図3は2種類のLDPEの定常状態の粘度を示しています。広範囲のずり速度域で同じような粘度ですが非常に異なる加工挙動を示します。180℃の温度条件でスリットダイ(幅3mmx長さ30mmx厚み0.3mm)を使ったキャピラリーレオメータの測定では、LDPE6はずり速度が500s-1で不安定流動を示すのに対し、LDPE5は800s-1のずり速度まで不安定流動がみられませんでした。

第一法線応力差とダイ入口圧力損失(dPe)の両方が不安定流動の決定要因となるため、図4はずり速度に対する第一法線応力差とダイ入口の圧力損失の比を示しています。このグラフから2つのサンプルの特性が異なることが分かります。

第一法線応力差/ダイ入口の圧力損失(N1/dPe)とずり速度と不安定流動の開始点の関係を示すため、6種類のLDPEを評価しました。図5は、180℃で測定したデータにBaglay補正とWeissenberg-Rabinowitsch補正を行った粘度を示しています。前述の形状のスリットダイを使い180℃で測定した不安定流動の開始点を表1にまとめました。

図6は6種類のLDPEのN1/dPeとずり速度のグラフを示しています。不安定流動の開始点とグラフを比較すると、N1/dpeが高い材料ほど高いずり速度で不安定流動が現れていることが分かります。

まとめ

法線応力ダイは、ずり粘度と伸長粘度、第一法線応力差の測定が可能です。

  • ずり粘度:スリット部で測定された粘度データは、通常のキャピラリーダイで測定しBaglay補正とWeissenberg-Rabinowitsch補正を行ったデータと一致します。
  • 伸長粘度:ダイ入口の圧力損失からコグスウェル法によりもとめることが出来ます。
  • 第一法線応力差:法線応力ダイで測定した低ずり速度域のデータとコーンプレートで測定したデータは一致しています。法線応力ダイではより高ずり領域のデータまで測定が可能です。

同じ粘度カーブをもち加工挙動が異なる2種類のLDPEを、法線応力ダイを使って評価しました。その結果、N1/dPe対ずり速度のグラフから2種のLDPEの間に12%の差があることが分かりました。
また、不安定流動の開始点は第一法線応力差及びダイ入口の圧力損失と相関関係があります。同じずり速度でN1/dpe(第一法線応力差/ダイ入口の圧力損失)が高い材料では、高いずり速度で不安定流動が発生します。法線応力ダイで得られたデータは成形加工時の条件と同じ領域となるため、プロセスシミュレーションにも活用することが出来ます。法線応力ダイによりこれまで測定出来なかった加工領域のデータが評価可能となります。

これまで第一法線応力差の評価に使用されていたコーンプレートを使った測定方式と法線応力ダイを使った測定方式を比較しました。

コーンプレート 法線応力ダイ
最大10s-1 最大1,000s-1
5つのずり速度データの取得に少なくとも半日 5つのずり速度データの取得に30分
シミュレーションデータとして活用不可 シミュレーションデータとして活用可能

参考:Masood Khabazian Esfahani, Christos K. Georgantopoulos, Ingo F. C. Naue, Joachim Sunder, Manfred Wilhelm, J. Appl. Polym.Sci. 2022, 139(18), e52094
“A new slit-radial die for simultaneously measuring steady state shear viscosity and first normal stress difference of viscoelastic liquids via capillary rheometry”

 

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