メルトインデクサとキャピラリレオメータの違いとは何か
― 指標と“挙動”のあいだ ―
前回の記事では、「なぜ粘度を測るのか」という問いを通じて、流動特性を数値で捉えることの意味を考えました。
今回はさらに一歩進み、実務の現場で混同されやすいテーマ――
「メルトインデクサとキャピラリレオメータは何が違うのか」
という疑問を扱います。
装置選定の段階で、どちらが適しているか迷う方も多いと思います。どちらも溶融樹脂の“流れ”を評価する装置ですが、その役割と得られる情報は大きく異なります。
※キャピラリレオメータとは、溶融樹脂をキャピラリ(細管)内に流し、圧力と流量の関係からせん断粘度を測定する装置です。
MFRとは何を測っているのか

MFR(Melt Flow Rate)、あるいはMI(Melt Index)は、一定温度・一定荷重条件で、10分間に押し出された樹脂の質量(g/10min)を測定する試験です。
ASTM D1238やISO 1133などの規格に定められており、材料の品質管理やロット間比較に広く用いられています。
ここで重要なのは、MIは粘度そのものを測っているわけではないという点です。
粘度は本来、応力とひずみ速度の関係から定義される物理量です。しかしMIは、規格条件下での“流れやすさ”を表す指標(index)に過ぎません。
だからこそ装置名も「メルトインデクサ(Indexer)」と呼ばれます。
これは粘度計(viscometer)やレオメータ(rheometer)とは明確に異なる思想を持つ装置です。
なぜ“おもり方式”なのか
MFR試験では、一定荷重を与えるために「おもり」が使われます。
これは単なる構造上の都合ではありません。
MFRが規格化された1940年代当時、高温環境下で精密なモーター制御を安定して行うことは容易ではありませんでした。電源変動や電子回路のドリフトの影響を受けにくい“重力”は、最も再現性の高い力の基準だったのです。
さらに、MFRの目的は研究用途ではなく、材料の品質管理指標でした。
- 測定が簡便であること
- 誰が測っても再現性が高いこと
- 規格値として共有できること
この条件を満たす方法として、おもり方式は極めて合理的でした。
しかし、それだけでは不十分なこともある

プラスチックは非ニュートン流体です。
流す速さ(せん断速度)によって粘度は変化し、さらに温度や時間依存性も示します。実際の押出成形や射出成形では、材料は幅広いせん断速度領域を経験します。
MFRは単一条件での評価です。
言い換えれば、流動挙動の“1点”しか見ていないことになります。
材料開発や成形条件最適化の場面では、この1点情報だけでは不十分になることがあります。
キャピラリレオメータが測っているもの

キャピラリレオメータは、細管(キャピラリ)内を溶融樹脂が流れる際の圧力と流量の関係を測定します。
せん断速度を段階的に変化させながら測定することで、粘度曲線を得ることができます。
これにより、
- せん断薄化の程度
- 高せん断領域での挙動
- 分子量分布の影響
などを評価することが可能になります。
MFRが「流れやすさの指標」を与える装置であるのに対し、キャピラリレオメータは「流動挙動そのもの」を描く装置と言えるでしょう。
どちらを選ぶべきか
用途によって適切な装置は異なります。
メルトインデクサが適しているケース
- 材料ロットの受入検査
- 規格値との適合確認
- 日常的な品質管理
キャピラリレオメータが適しているケース
- 新材料開発
- 成形条件の最適化
- 成形不良の原因解析
- 分子構造の違いの評価
特に、MFR値が同じでも成形性が異なるケースでは、粘度曲線の比較が有効です。
指標と挙動

使い分けが重要
メルトインデクサは、プラスチック産業の発展とともに広く普及し、今もなお重要な試験法です。
一方で、材料の高機能化・高速成形化が進む現在では、より詳細な流動情報が求められる場面も増えています。
指標としてのメルトインデクサ。
挙動を描くキャピラリレオメータ。
両者は対立するものではなく、目的に応じて使い分けるべき評価手法です。
実際の成形条件を再現した評価が必要な場合には、キャピラリレオメータによる多点測定が有効です。測定条件の設定や評価方法についてのご相談も承っております。
